どんより (藪の中)
公演ごとに玉城さんにお手紙を書いています。
いつだったかな、1月か2月頃に、確かこんな内容のことを書いたと思います。
「現代劇も素敵ですが、大正や昭和初期の頃の少しレトロな時代の雰囲気もとても似合うと思う。その時代に書かれた作品が舞台等になることがあれば、玉城さんの姿と声で見てみたい」
的な。
丁度その頃、年末のライチの退廃的な風景のなかでエロティックに生きる少年やら、1月の不毛会議の戦時中にストイックにおのれを殺して生きる軍人さんやら、どこか暗くどんよりとした空気のなかでお姿を観る機会が続き、さらに1月末ころに発売されたグッカムにおいて「ドグラ・マグラ」のイメージカットを観、ああ、とても似合うなぁ!きれいだなぁ!と思いました。
大学では近現代の日本文学を勉強したり研究したりしていたのでもともと好きなので、家にある好きな小説の人物を玉城さんに置き換えて遊んでいました。
たとえば、わたしは江戸川乱歩の怪奇短編が好きなのですが、『人でなしの恋』という作品における旦那様あたりはわたしのなかでは完全に玉城さんです。
とびきり美しい方という設定ですが、その美しさを語る奥さんの言葉が、
「美しいといいます中にも、病身なせいもあったのでございましょう、どこやら陰気で、青白く、透き通る様な、…(略)」
とあり、ああこれは!と思いました。
この世のものではないくらいうつくしいけれど、どこか儚げで、陰気さもある。言い方はあんまりですが、どこか不健康さを纏ったこの感じが!すごくそれっぽいなと!
先日、6月に上演が決まっていた「極上文學」の追加キャストが発表され、そのなかに玉城さんのお名前もありました。
偶然なのですが発表の少し前に極上文學の公式サイトを見ており、ああ、まだ追加キャストさんがいるんだ、玉城さんが出るようなことがあればいいのに…と想像する、ということが本当にあったので驚きました。玉城さんが出演されなくても観たいなと思っていたので、これはもう本当にうれしいことでした。
文学が好きなのでとても気になっていた企画なのですがもろもろのタイミングが合わず、これまでに拝見したことはなかったので、今回それを観ることができる機会を与えていただいたよろこび、そして、わたしの大好きなどんよりと薄暗い、近現代日本文学の「朗読劇」に、玉城さんが出演されることのよろこびはとても大きいです!超うれしい!つらい!的な!
作品は芥川龍之介の『藪の中』。大学在学中、一度ですが読みました。読みながらなんども混乱し、困惑し、わけがわからなくなりました。わたしがいままで読んだなかでいちばん混乱したのは先程も登場した『ドグラ・マグラ』でしたが、あれよりも比較的題材がわかりやすいからこその混乱でした。「あるひとつについての事件の証言」という比較的普遍的なテーマであるのに、もうなんというか、ひどく困惑した記憶が強く残っています。
すてきな演者さまたちに幻惑されつつ、またあのどんよりとした嘘に戸惑いたいと思います。
そして「観てみたい」と思っていたものが、実現したよろこび!
今後もさまざまに夢を持って追いかけていきたいと思っています!笑